こっそりと空席を探して座ってみると、今までよりもすわり心地がよく感じて、満足していた。
あの人の駅に着いて連絡を入れてみたら、思った以上に喜んでくれて。
「だけど、どうしてちっちゃくなっちゃったの?」
そう聞かれても、私にもわからない。
だけど、ちっちゃくならなかったら、今日ここに来れてないのだから、
きっとそれはそれで良かったんだよ。
そう言ったら、そうだね。会えればいっか。
といって笑ってくれた。
胸ポケットに入れてもらって、歩く振動と心臓のどくどくを感じていたら、
気持ちよくて寝てしまった。
「コラ。せっかく会えたのに寝るなよ。」と言って指でこづかれた。イタイ。
でも、一緒にいられるから、五感も六感も全部使ってこの時間を感じたい、と思った。
どこへ歩いていってるのかと思ったら、桜並木の見えるところだった。
「せっかくだからさ、一緒に見たいなと思って。」
そう言って、ポケットから引っ張り出されて、肩に乗せてくれた。
まだ少し早いようだけど、案内してくれる、その気持ちが嬉しかった。
何を観るのかじゃなくて、誰と観るのか。これが一番大切なんだナ。
私は、桜よりも彼ばかり見ていた。